昭和の初めから、地域の人たちにとって欠かせない存在として営業を続ける「人吉温泉 元湯」。人吉城跡に近く、昔から水害対策を行ってきた地域にも関わらず約160センチも浸水してしまいました。
「スーパーが無事だったので、工具を購入し、知人に手伝ってもらいながら、ほとんど自分たちで復旧作業を終えました。常連さんたちは、毎日うちの温泉に入ることが習慣なので、水害の初日から『やってるね?』って毎日見に来られるんです。これは頑張って開けなん!と思って、7月10日から時間限定で再開しました」とご主人の有地さん。とはいえ、水害の影響はしつこく、カビが生えてきたり、壁も剥がれてきたため、8月中旬頃から男女、交代で工事を行い、10月に完全再開を果たします。
「源泉は少し高い場所にあったため無事だったのと、たまたま、お風呂掃除のために高圧洗浄機を買っていて。水害の4日前に到着していたのが早く復旧できた理由ですね」と有地さん。
自治体からの入浴支援は終わりましたが、現在も、被災された方には入浴料を半額にするなど、支援活動を続ける有地さん。「常連さんが足を運び、挨拶を交わし、温泉を楽しむ…。町湯には、地域の見守りの役目もあるんです」。誰も取りこぼさない。90年近く地域の人たちと歩んできた町湯の優しくて熱い想いが、そこにありました。
人吉温泉 元湯
住所/人吉市麓町9
電話/0966-32-8632
営業時間/7時〜12時、14時〜22時
定休日/第4木曜、元日
料金/大人300円、小学生以下100円
text&ph(一部借用したものです)/今村ゆきこ